PSG会長が最後通牒もなぜエムバペは有利なのか? 移籍金を支払えるクラブはある?

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Kylian Mbappe and Nasser Al Khelaifi of PSG split
Getty Images

パリ・サンジェルマン(PSG)のキリアン・エムバペの去就は近年ずっと話題になってきたが、今夏はさらに激しさを増すばかりとなっている。

2022年夏、エムバペはレアル・マドリーへのフリーでの移籍が噂されていた中で、PSGと巨額の新契約を結んで世間を驚かせた。

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この時の契約は、3年目が選手のオプションとなる2年契約。2024年夏に満了となる。エムバペはすでにクラブに対し、オプションを行使しないことを書面で伝えた。つまり、PSGは今夏エムバペを放出して多額の移籍金を得るか、来年夏にフリーで手放すかを選ばなければいけない。

移籍金やサラリーで総額5億ユーロ(約780億円/1ユーロ=156円換算)超を投じてきたPSGだけに、2024年にエムバペをフリーで失うことは望んでいないだろう。だが、彼らには選択肢がないかもしれない。

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キリアン・エムバペに対するPSG会長のコメント

PSGのナセル・アル・ケライフィ会長は、ルイス・エンリケ新監督のお披露目会見で、エムバペの将来について選手に最後通牒を突きつけた。

契約を延長するのかしないのか、PSGは一方的にエムバペに対して決断するように期限を設定した。アル・ケライフィ会長は強硬姿勢で、クラブが困難な立場に置かれないよう、エムバペはすぐ決心する必要があると話している。

アル・ケライフィ会長は「残留を望んでいるが、彼が2024年にフリーで去ることはできない」と、PSGとの新契約を望まない場合、エムバペを売却すると示唆した。

「それが口頭合意だった。彼はインタビューでもそう公言していた。議論の余地はない」

「彼がフリーで去ることを考えていると知り、本当にショックを受けた。非常に残念だ。キリアンはファンタスティックな青年で、真のジェントルマンだからね。フリーでの移籍は、フランス最大のクラブを弱体化させることになる」

「だからこそ、彼は来週か、遅くとも2週間のうちに決断しなければならない。そして新契約を結ぶことを望まないのなら、(退団への)扉は開いている。彼に対しても、ほかの誰に対しても同じだ。クラブよりも大きな存在はいない。どんな選手でもね。私ですらそうだ。非常に明確なことだよ」

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アル・ケライフィ会長を支持するルイス・エンリケ監督

PSGのルイス・エンリケ新監督は、就任会見でアル・ケライフィ会長ほど明確なスタンスではなかった。だが、全般的には新たなボスを支持しているようだ。

会見でエムバペの今後を問われると、エンリケ監督は「契約した時に我々はずっとオープンなままだった」と述べている。

「いろいろなことが起こり得る。プロとしての秘密であり、公にはしない。我々はPSGのためにできる限り良いスカッドにしていくつもりだ」

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キリアン・エムバペの移籍金を支払えるクラブは?

PSGにとって不幸なことに、エムバペの移籍を交渉できるクラブの選択肢は多くない。

移籍先となる可能性があるのは、とてつもない額の移籍金だけでなく、エムバペの巨額サラリーも支払えるクラブでなければならない。そして、そのどちらも可能なヨーロッパのクラブがあるとは思えない。

スペイン

エムバペは2023年夏にレアル・マドリーへ移籍すると見られている。選手を非常に高く評価していると言われているクラブだ。だが、昨年エムバペが突然PSGと契約を延長したことに傷ついているクラブでもある。

マドリーは今夏、すでにジュード・ベリンガムの獲得に巨額を投じた。移籍金は1億1000万ドル(約158億4000万円/1ドル=144円換算)がベースだ。その中で、エムバペの移籍金とサラリーを支払うだけの予算の余裕はないだろう。マドリーは2024年夏を待ち、移籍金を支払う必要なしにエムバペと契約することで満足なようだ。

マドリーの宿敵バルセロナは、長期にわたって財政危機に苦しんでいる。2度にわたって、クラブの象徴であるリオネル・メッシが再びバルセロナのユニフォームを着てプレイするための契約にこぎつけることもできなかった。エムバペ獲得に要する移籍金とサラリーを負担できる可能性はほとんどない。

イングランド

完璧な世界であれば、理論上は、プレミアリーグの一部クラブにエムバペにかかるコストを支払うことができるかもしれない。だが現状、どのチームにもそれは不可能なようだ。

最も資金力のあるマンチェスター・シティは、移籍先の候補となるかもしれない。だが、彼らはファイナンシャル・フェア・プレイ(FFP)を巡り、プレミアリーグやUEFAと大きくもめているところだ。2シーズン連続でジャック・グリーリッシュ、アーリング・ハーランドの獲得に大金を投じてきた中で、エムバペも獲得すれば、彼らの助けにならないだろう。

マンチェスター・ユナイテッドは新オーナーへのクラブ売却の可能性があり、ここ数年でアントニーやジェイドン・サンチョ、カゼミーロの獲得に大金を投じてきただけに、再び資金を費やすことはないはずだ。

アーセナルはこの夏、すでにカイ・ハバーツやデクラン・ライスという大物のターゲットに大金を投じている。

最後に、リバプールはこれだけの大金を投じてスーパースターを獲得するとは見られておらず、スカッドにはすでに若くて有望な攻撃のタレントたちがいるだけに、レースから外れるだろう。

ドイツでこれだけの極めて大きな移籍を実現できるクラブは、バイエルン・ミュンヘンしかない。退団の可能性があるサディオ・マネの代役としてエムバペ獲得を狙うことは、理論上はあり得るだろう。しかし、エムバペ獲得の噂があがったことはない。

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PSGとのにらみ合いで力を持つキリアン・エムバペ

アル・ケライフィ会長とPSGは強気かもしれないが、実際には極めて無力というのが現実だ。

エムバペは、どこに移籍するにしても、巨額の移籍金が不要であれば、さらに大きな契約を結ぶことができると知っている。そのため、PSGとの契約を全うし、2024年にフリーで移籍するのが、彼にとって最も望ましい結果だ。

加えて、PSGが売却するにしても、24歳のエムバペはどんなクラブからのオファーも拒むことができる。どんな移籍交渉も一挙に破談させることができるのだ。

クラブのファンから愛されているエムバペだけに、PSGが選手をのけ者にしたり、ベンチに置くなどして「報復」することは実質的にできない。サポーターの反感を買うことになるからだ。

これらを考えれば、エムバペが契約を最後まで全うすることを望んだ場合、PSGは何を頼れるというのだろうか。何もない。そのため、クラブは選手の思うままに振り回される状況なのだ。

原文:Why Kylian Mbappe has all the power in PSG contract war vs president Nasser Al-Khelaifi despite ultimatum(抄訳)
翻訳:スポーティングニュース日本版編集部

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Kyle Bonn is a soccer content producer for The Sporting News.
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